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セビリア|カラフルな色彩と立体感のある模様が特徴の「セビリア焼き」

投稿日:2018年1月15日 更新日:

イスラム教とキリスト教の共演

オペラ「セビリアの理髪師」、「カルメン」の舞台でも有名なセビリア(Sevilla.日本では「セビリア」の表記が定着していますが、セビーヤ、セビージャ、セビリャ、セビーリャなどの表記もあります。ここではセビリアに統一します。)へは、マドリード(Madrid)からAVEなどで約2時間半。スペイン第4の都市であり、スペイン南部に位置するアンダルシア地方の政治、経済、文化の中心地です。

出典:depositphotos.com(セビリア)

街は大西洋へとつながるグアダルキビール川の恩恵を受け、海洋貿易の拠点として長らく繁栄を誇っていました。1492年に新大陸(アメリカ)を発見したコロンブスはここセビリアから出帆。セビリアが果たした重要な役割は今も語り継がれています。

711年から1248年まで、アル・アンダルス(現在のアンダルシア地方)の他の町々と同様イスラムの支配下におかれ、その影響を強く受けたセビリアの街には現在もイスラム文化が色濃く残されており、例えば、現存するヒラルダの塔は当時モスクの鐘楼だったものです。

しかしセビリアの街を彩るのは、イスラム文化だけではありません。ヒラルダの塔に隣接するカテドラル(Catedral)はイスラムのモスクを取り壊して、1402年から約100年をかけて建設された世界第3位の規模を誇るキリスト教の大聖堂で、聖堂内には世紀の大発見をしたコロンブスのお墓もあります。

出典:depositphotos.com(大聖堂とヒラルダの塔)

出典:european-tableware.com(コロンブスの墓)

このようにセビリアの街のあちらこちらで、イスラム教とキリスト教の文化の共存が見られます。

 

レアル・アルカサル王宮を彩る陶器装飾

セビリアの街の最大の見どころは、スペイン王室の宮殿レアル・アルカサル(Real Alcázar de Sevilla)です。

出典:Real Alcázar de Sevillaホームページ

14世紀、当時イベリア半島の中央部を支配していたカスティーリャ王ペドロ1世(Pedro I、1334-1369)の命により、イスラム時代の宮殿の跡地にムデハル様式(イスラム教とキリスト教の建築様式が融合したスタイル)で建設が始められた王宮は、グラナダのアルハンブラ宮殿を意識した構造でした。その後15世紀から16世紀に増築されたため、ゴシックやルネサンスなどの様式も混ざっています。この宮殿の中には多数の装飾タイルが残されています。

出典: Wikipedia(カスティーリャ王ペドロ1世)

初期のタイル装飾にはイスラム美術を強く反映した「クエルダ・セカ」という技法が用いられていました。クエルダ・セカとは1枚のタイルの中で釉薬の色が混じり合わないよう、油を含んだ炭で模様を描き、その内部を釉薬で彩色する方法で、輪郭の縁が少し下がることで模様の部分が浮き上がるのが特徴です。

11世紀頃イスラム世界で誕生した技法で、最も優れた作品は16世紀に作られたイスタンブールのトプカプ宮殿に残されていますが、スペインでこの様式が現れるのは15世紀後半、セビリアのアルバ公並びにメディナセリ公の宮殿を飾っていたものが現存する最古の作例と言われています。

出典:ceramicatriana.com(クエルダ・セカ技法のタイル)

出典:ceramicatriana.com(クエルダ・セカ技法の陶器時計)

16世紀に入るとクエルダ・セカ技法に代わる新しい技法が人気を博します。「クエンカ」と呼ばれたこの技法はセビリア生まれとも言われ、粘土を木製の型に押し付けて凹凸を付け、釉薬が混ざり合わないように輪郭をしっかりつけていく手法です。クエンカ技法を使ったセビリアのタイルは、国内だけではなく、イギリスやイタリアへも輸出され、高い評価を得ていました。

出典:victorianweb.org(クエンカ技法のタイル)

クエンカ様式タイルのモチーフは大きく分けると2種類で、1つはイスラム技術を色濃く残した組紐文、星形などの幾何学模様。

もう1つは人物やヨーロッパ風の動植物、王家の紋章などを用いたイタリア・ルネサンスの影響がうかがえる作品です。後者のモチーフはセビリアに移住してきたイタリア人陶工が伝えたものと考えられています。例えば「ボールトの間」のシチリア島出身のクリストバル・デ・アウグスタによって1577年から1578年に製作された化粧タイルの腰壁は、古代神話を髣髴とさせる寓話の象徴など、ルネサンス様式のモチーフがテーマとなっています。

出典: european-tableware.com(ボールトの間)

他にもコロンブスの新大陸に出資したした、スペイン王国のカトリック両王(アラゴン王フェルナンド2世とカスティーリャ女王イサベル1世)の小礼拝堂の主祭壇には、イタリア・トスカーナ地方出身のフランシスコ・ニクロソ・ピサーノによる聖書の一説「聖母マリアのご訪問」を描いた化粧タイル張りの祭壇画があります。

出典:european-tableware.com(カトリック両王の小礼拝堂)

この作品はセビリアのルネサンス時代の傑作と言われていますが、化粧タイルをまるでカンバスに見立て、色彩鮮やかな絵が描かれたこの作品からは、当時最先端の技術を誇っていたイタリアのマヨルカ焼きの影響も伺えます。

伝統的な陶器製作の手法を引き継ぎ、現在セビリアでは色鮮やかな「セビリア焼き」と呼ばれる“クエルダ・セカ”技法を使った作品が作られています。中には縁取りに金を使った豪華なものも有るようです。この技法を用いると、アラベスクの模様など、まるで一個一個小さな石を組み合わせたモザイクのように見えます。

 

映画のロケ地として有名な「スペイン広場」

中心地の南には、1929年セビリアで開催された万国博覧会「イベロ・アメリカ博覧会」の会場施設として造られたスペイン広場(Plaza de España)が有ります。セビリア出身のアニバル・ゴンザレスが設計したもので、アンダルシア地方の典型的な建築様式であるムデハル様式を用い、両翼に半円形に延びる回廊が素晴らしく、現在はアンダルシア州の事務所として使われています。

出典:depositphotos.com(スペイン広場)

このスペイン広場で最も目を引くのは回廊の外側を飾るタイル装飾です。スペイン48県の歴史的出来事が描かれています。

出典:depositphotos.com(スペイン広場の装飾タイル)

近年この広場が世界中で知られるようになったのは、映画「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」でアナキン達が惑星ナブーに着いた直後のシーンがここで撮影された影響によるものでしょう。他にも映画「アラビアのロレンス」で、英軍が逗留するカイロのホテルとしても使われています。

 

参考資料

「タイルの美」TOTO出版

「レアル・アルカサル」日本語ガイドブック、Dosdearte Ediciones

レアル・アルカサル ホームページ

Wikipedia

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